この記事は、お子さんのサッカーの試合を、これから応援に行かれるすべての保護者の方に読んでいただきたい内容です。

誰かを批判する記事ではありません。私自身、自分の子どもがスポーツをしていた時、同じような失敗をしてきました。だからこそ、伝えたいという思いで書いています。

試合会場でよく見る光景

少年サッカーの試合会場に行くと、こんな光景をよく目にします。

「〇〇、走れ!」「そこじゃない!」「なんで今のパスミスるんだよ!」
「もっと前!」「後ろも見ろ!」「早く戻れ!」

お父さん・お母さんが、ピッチのすぐそばから、次々と指示や叱責を飛ばしている光景です。

気持ちは、本当によく分かります。かわいい我が子が頑張っている姿を見ていると、つい、口を出したくなる。負けそうになると、応援したくなる。ミスをすると、悔しくなる。──親として、当然の感情です。

でも、その気持ちが強すぎると、お子さんの成長を、無意識のうちに止めてしまうことがあります。

今日は、20年指導してきた私が、試合中に保護者の方がやってはいけないことを3つ、お伝えします。

やってはいけない① ピッチ外からの「指示」を連発する

「そこにパスを出せ」「もっと右に開け」「シュート打て」──試合中に、親御さんが具体的なプレー指示を出し続けるパターンです。

なぜダメか

子どもの「自分で判断する機会」を奪うからです。

コラム#05でも書きましたが、サッカーは自由なスポーツです。自分で観て、考えて、決めて、実行する。この経験の中でしか、判断力は育ちません。

親から指示が飛んでくると、子どもは「親の指示を聞くこと」に意識が向いてしまうのです。自分で観るのをやめて、親の方を見るようになる。判断する前に、親の指示待ちになる。

これは、コーチが試合中に細かい指示を出すのと、同じ構造の問題です。育成の観点から見ると、大人が子どもの試合をコーチングしてしまっていることになります。

もう一つの問題

親の指示は、しばしばコーチが伝えている内容と矛盾します。「攻めろ」と親が言っている時、コーチは「まず守備の位置に戻れ」と考えているかもしれません。「シュート打て」と親が言っている時、コーチは「もう一つ、パスをつないでみろ」と待っているかもしれません。

子どもは、板挟みになります。誰の言うことを聞けばいいのか、混乱します。結果的に、自分で判断することを諦めるようになります。

やってはいけない② ミスを責める言葉をかける

「なんで、今のミスるんだよ!」「ちゃんとやれ!」「集中しろ!」──ミスに対する叱責です。

なぜダメか

子どもは、「ミスをすると怒られる」と学ぶからです。

すると、次からどうなるか。ミスをしないプレーしか、選ばなくなるのです。

簡単なパスを選ぶ。挑戦しない。ドリブルで抜こうとしない。シュートを打たない。──ミスの少ない、「安全な」プレーばかりを選ぶ子になっていきます。

これは、成長にとって致命的です。子どもは、ミスの中でしか成長できないからです。難しいプレーに挑戦して、失敗して、悔しがって、次に活かす。この循環がなければ、伸びません。

親からの叱責は、この「挑戦する権利」を、子どもから奪うことになります。

ミスに対して大人が示すべき態度

ミスをした瞬間、大人の反応を、子どもは驚くほど敏感に見ています。

そこで、「大丈夫、次いこう」「今のは惜しかったな」という反応が返ってきたら、子どもは「ミスしても、また挑戦していいんだ」と学びます。

「なんで、こんなミスするんだ!」という反応が返ってきたら、子どもは「ミスは、してはいけないんだ」と学びます。

この積み重ねが、6年後に、まったく違う選手を作ります。

やってはいけない③ 他の子と比較する

「〇〇君はゴール決めたのに」「あの子、上手いね。あんたも見習いなよ」「〇〇君のお母さんが、あんたのこと、心配してたよ」──他の子との比較です。

なぜダメか

比較の言葉は、子どもの「自分ごとの感情」を破壊します。

サッカーの成長は、自分と向き合うところから始まります。「昨日の自分より、今日はどう成長したか」「先週できなかったことが、今週できるようになったか」──この、自分軸の感情が、成長のエンジンです。

ところが、他の子と比較されると、意識が「他人軸」になります。「あの子より上手くならなきゃ」「あの子と比べて、僕はダメだ」。この感情は、成長のエンジンにはなりません。むしろ、子どもの自尊心を削り、サッカーを嫌いにさせる原因になります。

比較の呪縛

比較の恐ろしいところは、親が意図せずやってしまうことです。

「あの子、いいプレーしたね」──悪気なく、ただの感想として言った一言でも、隣で聞いている我が子は「僕はダメなんだ」と受け取ることがあります。

子どもの前で、他の子のプレーを褒めるのは、慎重にしてください。褒めるなら、その子のいるところで、直接。我が子の前では、我が子のことだけを、話しましょう。

では、代わりに何ができるか

「じゃあ、試合中は何をすればいいの?」──当然、そう思われる方も多いはずです。

私がおすすめしているのは、次の3つです。

代わりにできる① 「見守る」

基本は、これに尽きます。ただ、静かに、見守る

試合は、子どもたちのものです。コーチのものでも、保護者のものでもありません。子どもたちが、自分の意思で楽しむ場です。その場を、大人が奪わない。

もちろん、応援の声は出していただいて構いません。「ナイスプレー!」「頑張れ!」というポジティブな声かけは、子どもの背中を押します。ただ、プレーの指示や、ミスへの叱責は、しない。ここが線引きです。

代わりにできる② 「挑戦した瞬間」を見つけて、褒める

試合の中で、お子さんが「難しいプレーに挑戦した瞬間」を、見つけてみてください。

ドリブルで抜こうとした。難しい方向にパスを出そうとした。相手に体を当てに行った。ゴール前に走り込んだ。──結果はミスに終わっても、挑戦した事実そのものを、家に帰ってから褒める

「今日、あの場面でドリブル仕掛けたの、良かったね」
「相手に体当てに行った、あれ、勇気あったよ」
「あのパス、成功してたら最高だったな。挑戦して良かった」

結果ではなく、プロセスを、挑戦を、勇気を、褒める。これが、子どもの「挑戦する力」を育てます。

代わりにできる③ 試合後に、本人に「問う」

試合が終わった後、車の中や帰り道で、本人に問いかけてみてください。

「今日、何が見えた?」
「うまくいったのは、どんな場面?」
「悔しかったのは、どこ?」
「次、どうしたい?」

ポイントは、親が答えを言わないことです。本人に、考えさせる。言葉にさせる。

本人が、自分で振り返って、自分で気づいて、自分で「次はこうしよう」と決める。この過程こそが、育成の本体です。

親は、その伴走者です。指示者でも、批評家でもありません。

一番大切なこと

ここまで書いてきた全てを、一言でまとめると、こうなります。

試合は、子どものものです。
親のものでも、コーチのものでもありません。
子どもの試合を、子どもに返す。
──これが、育成重視の根っこにある考え方です。

親が「勝たせたい」と願う気持ちは、当然の愛情です。でも、その気持ちが強すぎると、子どもの成長する権利を、無意識のうちに奪ってしまうことがあります。

だから、試合中、私たちができる一番いいことは──「口を出したい気持ちを、ぐっと飲み込む」ことです。飲み込んで、見守る。挑戦を、褒める。試合後に、問う。

これができるようになると、お子さんは驚くほど自立していきます。自分で判断し、自分で試合を作り、自分で振り返る子に育ちます。

最後に

この記事を読んで、「あぁ、自分もやってしまっている」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

大丈夫です。私も、自分の子どもの時、失敗しました。多くの保護者の方が、同じ道を通ります。

気づいた瞬間から、変えていけば、それでいい。次の試合、口を出しそうになったら、深呼吸をひとつ。それだけで、変わります。

お子さんの成長は、コーチと保護者と、そして本人の三者で作るものです。試合中の「見守る力」を、保護者の方に育てていただけたら、私たちコーチも、本当に嬉しいのです。