エルソールフットボールクラブからは、累計30名以上の卒団生がジュニアユースや強豪クラブへ進んでいます。

その理由をよく聞かれます。答えは、練習の中身です。

このページでは、普段どういう考えで練習をしているのかを、できるだけ正直に書きます。少し専門的な話になりますが、お付き合いください。

「見る」と「知る」は、違います

サッカーは認知・判断・実行の繰り返しでできています。観て、決めて、体で実行する。こちらのコラムで書いた「観る・考える・決める・実行する」の4つの力は、これを分解したものです。

今日お伝えしたいのは、その入口にある認知の話です。

認知というと「周りを見ること」だと思われがちですが、それだけではありません。

「見る」と「知る」は、違います。

顔を上げて、相手の位置が目に入った。これは「見た」だけです。

その相手がどこを向いているか。重心がどちらに乗っているか。味方との距離がどうなっているか。目に入った情報が何を意味していて、次に何が起きる予兆なのか。それを理解して初めて「知った」ことになります。

サッカーで必要なのは、後者です。見ているだけの子は、目は動いていても、何も分かっていません。

判断できないのは、認知できていないからです

ここが繋がると、いろいろなことの説明がつきます。

コーチが「こう動いてほしい」と思っている場面で、選手がそう動かない。よくあることです。

このとき、選手はサボっているわけでも、やる気がないわけでもありません。そう判断していないだけです。

ではなぜ、そう判断できないのか。認知できていないからです。目には入っていても、それが何を意味するかを知らない。だから、その判断に至らない。

順番はいつも同じです。

認知できていない → だから判断できない → だから動けない

つまり、動けない原因は実行の手前、もっと言えば判断の手前にあります。

だから私は、試合中に怒鳴りません

エルソールは「プレーのミスで怒鳴らない」と掲げています。これを優しさだと思われることがあるのですが、違います。

怒鳴っても、意味がないからです。

認知できていない子に「何やってんだ!」と言っても、認知できるようにはなりません。「こう動け!」と指示すれば、その場は動きます。でも次に同じ場面が来たとき、また分かりません。指示されて動いただけで、知ったわけではないからです。

もっと言えば、こうです。

試合中に私が「何やってんだ!」と言いたくなったとしたら、それは選手の問題ではありません。私の準備不足です。

その場面で必要な認知を、普段の練習で身につけさせられていなかった。設計できていなかった。責任は私にあります。

だから私は、試合中に怒鳴りません。怒鳴る代わりに、次の練習をどう設計するかを考えます。

そして、これは私だけの話ではありません。

エルソールにはコーチが11名いますが、誰からも「何やってんだ!」という声は出ません。全員が、それは選手ではなく自分の責任だと分かっているからです。そこは、クラブとして共有しています。

ゲーム形式は、試合をやらせることではありません

認知と判断は、それが要求される状況に繰り返し置かれることでしか身につきません。声をかけて身につくものではない。だから練習の設計そのものが、そうなっている必要があります。

エルソールの練習は、基本がゲーム形式です。ただし、ここで誤解されたくないのですが——

ゲーム形式とは、ただ試合をやらせることではありません。

コートの大きさ。人数。タッチ数の制限。ゴールの条件。どこにフリーマンを置くか。こうした条件をどう設定するかで、選手から引き出される認知と判断がまったく変わります

この設計をオーガナイズと言います。そして、これが非常に難しい。

「今日はこの状況を認知できるようにさせたい」という狙いがまずあって、その認知をしなければプレーできない条件を作る。狙いのないままゲームをやらせても、子どもは楽しいでしょうが、何も身につきません。ただ遊んで終わりです。

声のかけ方も同じです。答えを言ってはいけません。

「今のは右に出すんだ」と教えれば、その場は正解になります。でもそれは、私が認知して、私が判断したものを渡しただけです。子どもの中には何も残りません。

だから問います。「今、右はどうなってた?」「相手はどっち向いてた?」と。自分で見て、自分で意味を知る。その経験だけが積み上がります。

——つまり、この練習はコーチの技量が問われます。オーガナイズを設計する力と、答えを言わずに問い続ける忍耐。私がスペインまでライセンスを取りに行き、20年やってきた今も学び続けているのは、そこに尽きます。

ドリルは、やります。ただし目的が違います

誤解されたくないので書いておきます。基礎技術の練習をまったくやらないわけではありません。

技術の基礎練習を中心にやる日も、たまにあります。そのときはドリル形式です。ただ、メインではありません。

そして、その時間の目的がはっきりしています。

「家で個人練習をするときに、何をどう意識すればいいか」を教えるための時間です。

だから、やるときは相当細かくポイントを伝えます。立ち足をどこに置くか。体の向きはどうか。ボールのどこを、どの部分で触るか。細かすぎるくらいに言います。

ポイントさえ分かれば、あとは各自で積み上げられます。反復は、一人でもできることだからです。

集まったときにしかできないことを、集まったときにやる

エルソールの活動は、土曜・日曜・祝日と水曜の夕方です。平日に毎日練習があるわけではありません。

だからこそ、役割をはっきり分けています。

やること理由
チーム練習ゲーム形式。認知と判断を鍛える相手がいないと成立しないから
ドリルの回個人練習のポイントを細かく教えるやり方を知らないと積み上がらないから
個人練習基礎技術の反復一人でもできるから

一人でできることに、みんなが集まる貴重な時間を使うのはもったいない。集まったときにしかできないことを、集まったときにやる。限られた練習時間で成果を出すには、これしかないと考えています。

結果として

認知の意味を正しく捉える。それが身につく練習を設計する。答えを言わずに問い続ける。それを6年間、同じ方針で続ける。

その積み重ねの結果として、累計30名以上の卒団生が、川崎フロンターレジュニアユース、三菱養和 調布ジュニアユース、横河武蔵野ジュニアユース、Weiss Blau MITAKA といったジュニアユースや部活動へ進んでいます。

それと、もうひとつ。私自身が面白いと思っていることがあります。

うちには、いわゆる「学校で一番足が速い」「運動神経がいい」というスター的な子は、実は少ないんです。

セレクションをしていないので、当然といえば当然です。素質で選んでいません。

それでも、6年生くらいになると、サッカーが上手くなっている子が多い。

これは、素質のある子を集めた結果ではありません。積み上げてきた練習の中身の結果だと、私は思っています。

ただ、私が本当に大事だと思っているのは、進学先の名前ではありません。中学以降も伸び続けられる土台を持って卒団できたかどうかです。小学生年代でつくれなかったものは、その先でつくり直すのが難しい。だからここだけは、譲らずにやってきました。

練習を、見に来てください

ここまで読んでいただいて言うのも何ですが、文章より、実際の練習を見ていただくのがいちばん早いと思います。

どんな条件でゲームを組んでいるか。コーチがどんな声をかけているか。子どもたちがどんな顔で考えているか。15分も見ていただければ分かります。

見学だけでも構いません。お気軽にどうぞ。