秋になると、決まって増える相談があります。

「子どもが、練習に行きたがらなくなりました」
「試合に、ほとんど出られていません」
「移籍を考えているのですが、どう切り出せばいいか分からなくて」

9月から11月にかけて、新人戦や秋の大会が続きます。この時期は、出場時間の差がはっきり見える。ベンチに座っている我が子を、何試合も続けて見ることになるご家庭が出てきます。

そして多くの親御さんが、誰にも相談できないまま、ひとりで抱え込みます。

今日は、その状態にいる方に向けて書きます。「エルソールに来てください」という話ではありません。まず、動けなくなっている理由のほうをほどきたいと思っています。

言い出せないのは、サッカーの問題ではないから

相談を受けていて、気づいたことがあります。

親御さんが本当に悩んでいるのは、「どのチームがうちの子に合うか」ではありません。悩みの中身は、だいたいこちらです。

  • 監督やコーチに、なんと言えばいいのか
  • 一緒にやってきた保護者の方に、どう思われるか
  • 子どもの友だち関係を、壊してしまわないか
  • 途中で投げ出す親だと思われないか

サッカーの話ではなく、人間関係の話です。ここで足が止まっている方が、本当に多い。

三鷹のように地域が狭いと、なおさらだと思います。学校でも顔を合わせる。買い物先で会う。誰がどこに移ったという話が回るのも早い。

だから、まずこれだけは言わせてください。移籍を考えること自体は、後ろめたいことでも、薄情なことでもありません。お子さんの今の1年をどう使うかを真剣に考えている、それだけのことです。

「合わない」は、どちらが悪いという話ではありません

ここは、誤解のないように書きます。

私は、他のチームの指導を批判するつもりが一切ありません。20年この地域で指導してきて、真剣に子どもと向き合っている指導者を、たくさん見てきました。

ただ、クラブには方針の違いがあります。

勝つことを第一に置くチームがあります。試合に勝つために、上手い子を長く出す。大会で結果を残し、その経験を子どもに持たせる。これは、まっとうな育成の考え方の一つです。実際、その環境で伸びる子もいます。

一方で、勝敗より一人ひとりの成長を優先するチームもあります。うちはこちらです。

ただ、誤解のないように書いておきます。うちは出場時間を平等に配っているわけではありません。

上手な子は、それだけ練習してきています。積み上げてきた努力があって、その結果としての出場時間です。努力はせずに出番だけは人と同じだけ欲しい、というのは違うと私は思っています。そこは、子どもたちにもはっきり言います。

そのうえで、目先の1勝のために誰かの出番を削ることはしません。勝敗より、一人ひとりが伸びることを優先します。

そして、ここがいちばん大事なところです。うちでは、子どもに自分の状況を必ず伝えます。今どう見られているのか。何が足りないのか。出場時間が短いなら、何をどう変えればいいのか。理由が分からないまま、ベンチに座らせ続けることはしません。

どちらが正しいという話ではありません。お子さんに合っているのはどちらか、という話です。

靴に足を合わせる必要はない。足に靴を合わせればいい。それだけのことだと、私は思っています。

辞める前に、確かめてほしい3つの問い

とはいえ、勢いで決めてほしくはありません。移籍したのに、同じ悩みが繰り返されることもあるからです。

次の3つを、お子さんと話してみてください。答えが出れば、進む方向はだいたい見えてきます。

問い1 「サッカーが嫌」なのか、「今の状況が嫌」なのか

ここは、分けて考える必要があります。

ボールを蹴ること自体が楽しくなくなっているのか。それとも、試合に出られないこと、怒鳴られること、居場所がないと感じることが苦しいのか。

後者であれば、環境を変えることで戻ってくる可能性は十分にあります。実際、うちに来て半年でまるで表情が変わった子を、何人も見ています。

前者の場合は、少し休ませるという選択肢もあります。サッカーが嫌いになる子・好きでいられる子の違いにも書きましたが、いちばん避けたいのは、サッカーそのものを嫌いになって離れてしまうことです。

問い2 試合に出られないことを、お子さん自身はどう感じているか

これは、親と子で受け止め方がずれることが多い項目です。

親のほうが先に苦しくなっている場合があります。子どもは案外けろっとしていて、友だちと過ごす時間のほうが大事だったりする。逆に、子どもは何も言わないけれど内心ずっと悔しい、というケースもあります。

聞き方にコツがあります。「試合出たい?」と聞くと、たいてい「うん」で終わってしまう。「今のチーム、どう?」くらいの広い聞き方のほうが、本音が出てきます。

もう一つ、確かめてほしいことがあります。お子さんは、なぜ今出番が少ないのかを、説明されているでしょうか。

何が足りないのか、どうすれば変わるのか。それが本人に見えていれば、出番が少ない時期にも意味があります。やるべきことがはっきりしているからです。そこが分からないまま座っているのだとしたら、その時間はきついと思います。

問い3 この状態が、あと1年続いたらどう思うか

小学生の1年は、大人の1年とは重みが違います。

6年生の3月まで、あと何試合あるか。数えてみると、思ったより少ないはずです。その残った試合を、今のままの状態で終えることに納得できるかどうか。

ここで「それでもいい」と思えるなら、残る判断も正解です。「それは嫌だ」と感じるなら、動く理由があります。

学年の途中でも、遅くはありません

「今さら4年生から移っても」と言われることがあります。

そんなことはありません。

うちに4年生で来た子の話を、別のコラムに書きました。入ってきたときは、正直、実力的にはかなり厳しかった。それでも真面目に取り組み続けて、6年生の最後の試合でゴールを決めました。あの試合のことは、今でもよく覚えています。

エルソールにはセレクションがありません。学年の途中でも、年度の途中でも受け入れています。5年生からの入団も普通にあります。

6年生が引退する時期には枠にも余裕が出ますが、それを待つ必要もありません。

切り出し方で悩んでいる方へ

ここが一番の関門だと思うので、私が保護者の方にお伝えしていることを書いておきます。

まず、理由を細かく説明する必要はありません。不満を並べると、どうしても角が立ちます。

「子どもに合う環境を、家族で考えたい」。これで十分です。

そのうえで、これまでお世話になったお礼を伝える。指導者の方も、子どものことを思って指導してきています。感謝が伝われば、たいていは円満に送り出してくれます。

それと、順番です。先に決めてから伝えるのではなく、いくつか見てから決めるほうが、気持ちが楽だと思います。見学の段階では、まだ何も決まっていません。誰にも言う必要がない。

最後に

私がお伝えしたいのは、結局のところ一つです。

今すぐ決めなくて、大丈夫です。

移籍するかどうかを決めてから見学に来る方が多いのですが、順序が逆でいいと思っています。まず見て、雰囲気を感じて、お子さんの顔つきを見て、それから考えればいい。見学しただけで、何かが決まってしまうことはありません。

うちの練習を見て「思っていたのと違うな」と感じたら、そのまま帰っていただいて構いません。そういう方は実際にいますし、それでいいと思っています。合わない場所に無理に入っても、お互いにとって良いことは何もありませんから。

ただ、ひとりで抱えたまま、この秋を終えてほしくない。それだけです。

グラウンドで、お待ちしています。