4年生、5年生になると、必ずこの相談が来ます。

塾が始まるので、サッカーをどうしようかと。

三鷹や武蔵野は、中学受験をする家庭が多い地域です。実際、三鷹市では5〜6人に1人が私立中学へ進みます。うちにも毎年、受験する子がいます。

「サッカー 中学受験 両立」で検索すると、塾や受験情報サイトの記事がたくさん出てきます。書かれているのは「習い事をやめる判断基準」「取捨選択」。減らす方向の話です。

サッカー側から書かれたものが、ほとんど見当たりません。だから書いておきます。20年、受験する子を見送ってきた立場からの話です。

うちの場合、辞めるより休会が多いです

まず実際のところから。

6年生で辞める子は、います。ただ、それより多いのは休会です。

エルソールは休会を認めています。受験が終わったら戻ってきていい。実際、そういう子が毎年います。

形はさまざまです。

  • 1月から完全に休止して、それまでは普通に活動していた子
  • 11月頃まで活動して、そこから受験に専念した子

「6年生になったら辞めなければいけない」と思い込んでいる方がいますが、そんなことはありません。続けられるところまで続けて、必要になったら休めばいい。それだけの話です。

辞めれば受かる、というものでもありません

ここは、正直に書きます。

休会や退会をして、それでも落ちた子はたくさんいます。続けたまま受かった子もいます。

身内の話で恐縮ですが、私自身の子どもも、サッカーを続けたまま受験しました。それで困ったことはありませんでした。

20年見てきた実感として、サッカーを辞めたかどうかと、受験の結果との因果関係は、薄いと思っています。

誤解のないように言っておくと、「サッカーを続ければ受かる」と言いたいわけでもありません。そんな単純な話ではない。

ただ、「サッカーを辞める」ことが受験対策になるかというと、そうとは限らない。少なくとも、私が見てきた限りでは。

では、何が結果を分けているのか。

本人が、行きたいと思っているかどうか

結局、ここに尽きると思っています。

  • 自分でその中学に行きたいと願っているか
  • そのために何が必要かを、自覚しているか
  • 実際に行動しているか

この3つが揃っている子は、サッカーを続けていようがいまいが、やるべきことをやります。

逆に、「勉強しろ」と言われてやっている状態では、時間を増やしても身につきません。なぜ必要なのかが自分の中にないまま机に向かっても、それは自分ごとになっていない。

これは、サッカーでもまったく同じです。

「走れ」と言われて走る子と、「今ここで走らないと間に合わない」と自分で分かって走る子。同じ走るでも、身につくものが違います。うちの練習でコーチが答えを言わないのも、同じ理由です。

心配なのは、たぶん時間のことだと思います

ここまで書いてきましたが、保護者の方が本当に気にされているのは、もっと具体的なことだと思います。

サッカーに使っている時間を勉強に回せば、もっと詰め込めるのに。

週末が試合で潰れる。水曜の夕方も出ていく。その時間があれば、と考えるのは自然なことです。受験は範囲が決まっていて、詰め込んだ量がそのまま点数になる部分が、確かにあります。

ただ、その先のことも少し考えてみてください。

いま教育の世界で言われていること

私は教育に関わる仕事をしています。その立場から見ていても、この十年ほどで議論ははっきり変わりました。

いま言われているのは、「考えられる大人にすること」です。

知識を詰め込むことではなく、詰め込んだ知識を使える力。学校教育も入試も、その方向に動いています。

そして、AIが当たり前になった時代には、これがさらに強まると私は思っています。

知識の量では、人間はAIに及びません。覚えている量で勝負する場面は、もうそれほど多くない。問われるのは、それをどう使うか、何を選ぶかのほうです。

誤解しないでいただきたいのですが、知識が要らないと言っているのではありません。土台としての知識は絶対に必要です。そのうえで、考える力、決める力の重みが増していくという話です。

知識だけあって考える力がない子は、これから先、必要とされにくくなる。私はそう思っています。

サッカーで育つものは、机の上でも効きます

そして、その「考える力」「決める力」は、机の上だけでは育ちません。

サッカーは、頭を使うスポーツです。

観て、状況を理解して、何をするか決めて、実行する。この4つを90分間、何百回と繰り返します。

そして試合中、コーチは細かい指示を出しません。自分で決めるしかない。自分で決める経験を積んだ子は、自立します。

エルソールでは、プレーの指示だけでなく、物事の本質や意味を伝えるようにしています。「やれ」ではなく「なぜそれが要るのか」を。

自分で意味を理解して動く習慣がついた子は、勉強でも同じように動きます。言われたからやるのではなく、必要だと分かっているからやる。それが身につけば、サッカーの時間が削られたかどうかは、たいした問題ではなくなります。

親にできることは、そう多くありません

厳しい言い方かもしれませんが、思っていることを書きます。

大切なのは、子どもが自分の人生を、自分で考えて決断することです。

親にできるのは、そのために必要な情報を与えることと、サポートすることだけです。代わりに決めてあげることはできません。

親が決めた進路は、子どもの進路になりません。親が決めた「サッカーを辞める」も同じです。

だから、受験の相談を受けたときも、私は「続けなさい」とも「辞めなさい」とも言いません。本人がどうしたいかを聞きます。それが全部だと思っています。

うちの活動日について

実務的なことも書いておきます。

エルソールの活動は、土曜・日曜・祝日と、水曜の夕方です。平日の夜に練習はありません。

平日夜が空いているので、塾の曜日と重なりにくい。これは設計として意図したものではありませんが、結果的に両立しやすい形にはなっていると思います。

そのうえで、休会も認めています。休会期間中の月謝はいただきません。期間は事情に応じてご相談で決めています。直前期だけ休むのも、秋まで続けるのも、ご家庭の判断で構いません。

復帰するときは、コーチに声をかけていただくだけです。手続きらしい手続きはありません。

最後に

受験をするかどうか、サッカーを続けるかどうか。どちらも、ご家庭が決めることです。私が口を出すことではありません。

ただ、「どちらかを選ばなければいけない」と思い込む必要はないとは、お伝えしておきたいです。

選択肢はもっとあります。続けられるところまで続けて、必要になったら休む。終わったら戻ってくる。それで困ったことは、うちでは一度もありません。