1年生、2年生の保護者の方から、よく同じことを聞かれます。

みんなでボールに群がっているだけで、サッカーになっていない気がするんですが。

「これで上手くなるんでしょうか」と、少し言いにくそうに付け加える方もいます。

先に結論を書きます。低学年の心配は、ほとんどが心配しなくていいものです。むしろ大人が「直そう」として、この時期にしか身につかないものを取り上げてしまうことのほうが多い。

低学年の子どもを20年見てきました。よく聞く心配を6つ取り上げて、順に答えます。後半では、この年代で何を学ぶのかを書きます。

心配1:みんなで団子になっている

ボールの周りに何人も集まって、足が何本も出てくる。外から見ると、ただの押し合いに見えるかもしれません。

団子サッカーは、むしろテクニックを磨く場です。

ボールを持っている子の立場で考えてみてください。周りは相手だらけで、スペースはほとんどない。そこでボールを取られずに持ち続けるには、足元の技術が要ります。

狭い場所で、たくさんの相手に囲まれながらボールを扱う。上の学年になると、こういう経験はなかなかできません。ボールに触る回数も多いし、体がぶつかることにも慣れていきます。

「広がれ」と言えば、形の上では広がります。でもそれは、言われた場所に立っているだけです。自分で観て、考えて、空いている場所に動けるようになれば、子どもは自分から広がります。それまでは、団子でいいと私は思っています。

心配2:パスをしないで、ドリブルばかりしている

低学年の試合では、「パス!」という声をよく聞きます。「パスを教えてほしい」と頼まれることもあります。

はっきり書きます。小学1〜2年生に、パスは要りません。

特によくないのは、相手が来たから味方に預けるパスです。これは、相手から逃げているだけです。

逃げのパスを早く覚えると、一見うまくいきます。ボールは取られないし、チームもそれらしい形になる。でもその子は、相手と向き合う経験を積めなくなります。

この時期は、自分と相手の関係を学ぶ時期です。

  • どこまで近づかれたら、ボールを取られるのか
  • どう動けば、相手を抜けるのか
  • どのタイミングで、ボールを奪いに行けばいいのか

こういうことは、相手と1対1で向き合う中でしか身につきません。言葉で説明されても分からない。何度も取られて、何度も抜いて、ようやく体で分かるものです。

パスは、相手との関係が分かって、周りが観えるようになってから、自然に使えるようになります。順番が逆なんです。

保護者の方には、試合中に「パス!」と声をかけないようお願いしています(試合中の応援についてはこちらにも書きました)。ボールを持って相手に向かっていったなら、取られたとしても、そこを認めてあげてください。

心配3:ぼーっとしている、やる気がないように見える

練習中、ボールと関係のないところで砂をいじっている。空を見ている。低学年ではよくあることです。

この年齢の子が一つのことに集中できる時間は、まだ短い。大人と同じように90分ずっと集中しろというほうが無理です。

それに、ぼーっとしているように見えて、ちゃんと周りを観ていることもあります。他の子がやっているのを見て、次に自分でやってみる。観ることも、立派な練習です。

気にしてほしいのは、集中しているかどうかより、「また行きたい」と言っているかどうかです。言っているなら、心配いりません。

心配4:負けて泣く、試合に出たがらない

負けて泣く子は、たくさんいます。それだけ本気だったということです。悔しいと思えるのは、伸びる子に共通することだと思っています。

試合に出たがらない子もいます。恥ずかしい、怖い、うまくできる自信がない。理由はいろいろです。

無理に出す必要はありません。うちでは、出場の機会は必ず用意しています。本人が「出てみよう」と思えたときに出ればいい。

親にお願いしたいのは、結果を責めないことです。「なんで負けたの」ではなく、「悔しかったね」で十分です。

心配5:家で教えたほうがいい?

熱心な保護者の方ほど、家でも教えたくなります。サッカー経験のあるお父さん、お母さんならなおさらです。

気持ちは分かります。でも、低学年のうちは、教えすぎないほうがいいと思っています。

練習でも家でも細かく言われると、サッカーが「やらされるもの」になっていきます。そうなると、続きません。

帰り道にかけてほしいのは、「楽しかった?」「今日はどうだった?」の一言です。子どもが自分から話しはじめたら、それを聞いてあげてください。

家でやってほしいのは、教えることより一緒に遊ぶことです。公園でボールを蹴る、鬼ごっこをする。それで十分です。これは後半に書く「運動神経」の話にもつながります。

心配6:他の子と比べて下手な気がする

1年生と2年生では、体の大きさも、できることもまったく違います。同じ学年でも、4月生まれと3月生まれでは、ほぼ1年の差があります。

低学年で見えている差の多くは、生まれた月や、それまでどれだけ体を動かしてきたかの差です。サッカーの才能の差ではありません。

今の差が、そのまま先の差になるわけでもありません。低学年で目立っていた子が高学年で伸び悩むこともあるし、その逆もあります。4年生から始めて、最後の試合でゴールを決めた子もいます。

比べるなら、他の子とではなく、1か月前のその子と比べてください。

この年代で学ぶこと

ここからは、この年代で何を学ぶのかを書きます。

土台になるのは、サッカーが好きであることです。好きなら、言われなくてもボールを触ります。続けます。続ければ、伸びます(好きでいられる子の話はこちら)。

そのうえで、この年代に学ぶことは主に3つです。

1. 自分と相手の関係

心配1と2で書いたことです。どの距離なら取られないか。どう動けば抜けるか。いつ奪いに行くか。

相手と向き合う経験をどれだけ積めるかで、その先が大きく変わります。団子も1対1も、そのための時間です。

2. 技術(止める・蹴る・キープ・ドリブル・対人守備)

ボールを止める。蹴る。取られないようにキープする。ドリブルで運ぶ、抜く。そして、相手からボールを奪う対人守備。

どれも、相手がいる中で使えてはじめて意味があります。一人でできるリフティングの回数より、相手が来てもボールを失わないこと、相手から奪いに行けることを大事にしています。

守備もこの年代から教えます。攻撃だけ教えて守備は後回し、ということはしません。相手と向き合うのは、攻撃でも守備でも同じだからです。

3. 運動神経を高める(コーディネーショントレーニング)

走る、跳ぶ、止まる、向きを変える、バランスをとる。体を思いどおりに動かす力です。

体が思いどおりに動かなければ、ボールも思いどおりには扱えません。この時期に土台を作っておくと、あとで技術を覚えるときの伸び方が変わってきます。

うちのU8の練習では、鬼ごっこやボール遊びの形で取り入れています。子どもにとってはただの遊びですが、こちらは狙いを持ってやっています。

家庭でも、外で遊ぶ、公園で走り回る、いろいろな運動をしてみる。それがそのまま、この力を伸ばすことになります。サッカーだけやらせる必要はありません。

なお、クラスページではU8で大切にしていることを「ボールに親しむ」「体を動かす楽しさ」「仲間と関わる」「自分で考える」と書いています。ここに書いた3つは、それをもう少し具体的に言ったものです。

エルソールのU8クラスについて

最後に、うちのU8(小学1〜2年生)の実際を書いておきます。

  • 練習は土曜・日曜・祝日が中心。水曜日は不定期です
  • 1回は90分前後。鬼ごっこやボール遊びで体を温めて、ボールに慣れる練習、ミニゲーム、最後に振り返り
  • 試合は年6回程度
  • 月謝は1,000円。入会金も年会費もありません

練習の半分近くはミニゲームです。団子になって、相手と向き合って、取ったり取られたりする時間をたっぷりとっています。

最後に

低学年のサッカーは、大人から見るともどかしいことばかりです。団子になる、パスをしない、ぼーっとしている、泣く。

でも、そのどれにも、この時期にしか身につかないものが入っています。大人が形を整えようとするより、思い切りボールを追いかけさせてあげてください。

サッカーが好きで、相手と向き合って、体をたくさん動かす。この年代は、それで十分です。